鈴木有布子先生の
「星河万山霊草紙 ほしかわよろずさんれいぞうし」を読みました。
人と木霊とが共に暮らす町で、
生き別れになった人間を、
ずっと待ちわびて暮らす、
けやきの木霊と、その子孫たちの優しいお話です。
「星河万山霊草紙」で検索して下さいね。
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星河万山霊草紙 のあらすじ
星河町には古木が多く、
昔から古木の木霊が人間のもとへ、
嫁いでくることがあったそうです。
高校生の一歩(かずほ)の家でも、
5代前の先祖、天馬にケヤキの精が嫁ぎました。
ほおずきという名のその精霊は、この町最後の木霊で、
一歩の家では時折、
微弱な霊力を持つものが生まれてきました。
“起こし”と呼ばれるその力は、
一歩の祖父も使えるものですが、
残念ながら一歩にはその力はありません。
“起こし”とは、奇跡を起こす力、
植物の眠った生命力を起こす力なのです。
5代前の先祖に嫁いだほおずきは、
古木ながらいまだ健在で、その姿は若い娘のよう。
美しい顔におかっぱ頭、黒の僧服に袈裟をかけています。
彼女はかつて愛し、
生き別れとなった天馬が、
生きて戻ってくると信じて、130年もの間、
ずっと待ち続けているのです。
ファンタジーな作品なのですが、
美しい里山や、一歩やその家の人々、
町の在り様は、
本当にどこかの山に存在する町なのではないかとも思えます。
僧服姿のほおずきが何ともあでやかで、美しいです。
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星河万山霊草紙 のネタバレと感想
5代前とはいえ、一歩は、
ほおずきと血のつながった血縁者です。
ですが一歩はもうずっと、
ほおずきに恋をしているのです。
ことあるごとに、ほおずきにせまる一歩。
彼女の方は全く、相手にしていないのですが。
ケヤキの木の精霊であるほおずきは、
その源である古木が枯れてしまったら、
生きていることは出来ません。
起こしの力を使って、
一歩の祖父は毎日のように、ケヤキの木に力を与えますが、
ほおずきは少しずつ沈んだ様子を見せるようになります。
彼女自身もなぜ自分が生きているのか、
わからなくなっています。
130年前に生き別れになった、
天馬が戻ってくることなど、
ありはしないとわかっていても、
それでも待ち続けていることの、
悲しさや苦しさが、彼女を取り巻いているのです。
起こしの力を持たない一歩は、
自分にできる事を探し始めます。
そうして考え付いたのが、
ほおずきの本体であるケヤキの木に、
電球を通した鬼灯(ほおずき)をたくさんつるし、
ケヤキの木を鬼灯の光で飾ることでした。
天馬とほおずきが初めて会った時の、
情景を再現したのでした。
するとほおずきは、天馬の面影を見ていたいが為に、
彼の子孫とともに、ずっと生きていたことに思い当たるのです。
ほおずきを取り巻く人たちの、なんと優しいこと。
ほおずきの、みんなを見る目の優しいこと。
なんだか、
せつないような温かいような、
不思議な気持ちになりました。
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星河万山霊草紙 まとめ
「星河万山霊草紙」は9巻で完結しています。
温かく優しいのに心をぐっと持っていかれる、
そんな作品でした。
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