吉野朔美先生の
「いたいけな瞳」を読みました。
全5巻に連なる吉野先生の渾身の短編集です。
「いたいけな瞳」で検索して下さいね。
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いたいけな瞳のあらすじ
第1話「ラブレター」は、
駅で見初めた女の子をデートに誘ったペンギン好きの男の子が、
待ち合わせ時間になっても中々あらわれない彼女を、
もんもんとしながら待つお話です。
彼は待ちながら、
妄想と空想をくりかえします。
しまいには彼女の存在自体すら
信じられなくなるのですが、
結末は・・・。
第2話「幼女誘拐」は、
小さな女の子の一人称で繰り広げられる物語です。
夏休みの暑い日差しの中で、
小学生のつぐみは庭に寝転がり、
死んだふりをします。
お母さん、
つぐみを見つけて。
死んでるつぐみを見つけておどろいてよ。
彼女は決して、
本当に死にたいわけではないのです。
少女期特有の悲劇のヒロイン願望
のようなものがあるだけなのです。
彼女の母親はいたって普通の
優しい母親なのですが、
その淡々とした明るい日常の中だからこそ、
つぐみは非日常の闇を求めてしまうのかもしれません。
幼児から少し大人になった少女たちには、
興味のあるものがたくさんあるのです。
それは、
身近な人間の関心をひくことであり、
“死”というまるで想像もつかないものであり、
電柱の後ろに見え隠れする変質者の人影なのです。
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いたいけな瞳のネタバレと感想
第3話「愛の名のもとに」は、
ひとり孤独に生活を送っていた青年が、
公園でチェロを弾く女性と出会い、
それまでの人生観をちょっと変えていく物語です。
恐竜の骨格模型に囲まれた部屋の中、
PCで株式のデータを見ている青年。
食事は大量のサプリメント。
バイト先でも、
必要なこと以外には口を開かず、
淡々とした日常をおくっています。
ある日彼は公園で、
見知らぬ女性が弾くチェロの音色を聴きます。
他人が奏でる音楽を心に招き入れたことで彼は、
それまでは避けてきた他人との接触を、
少しずつ受け入れるようになっていきます。
やがて、
恋心にも似た想いを感じ始めた彼は、
彼女に話しかけてみようかと思い始めるのです。
青年が自分の殻を少しずつ打ち破っていく、
その過程が丁寧に描かれています。
馴れ馴れしい同級生も出てきて、
彼の後押しをしてくれるのもいいですね。
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いたいけな瞳 まとめ
この「いたいけな瞳」は、
1991年~1993年くらいに連載されていたそうです。
しかし古さを全く感じない作品です。
この作品は様々な短編で構成されていますが、
そのどれもが人間の心の深淵をのぞきこみ、
目の前にぱっと取り出されたような、
軽いカルチャーショックを
受けるようなものが多いように思います。
手元に置いて何度も何度も繰り返し読みたくなる作品です。
「いたいけな瞳」は文庫版で全5巻が出ています。
突然急逝された吉野朔美先生の、
魂がこもった珠玉の作品集です。
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